9/19 浅草吟行

 

 

 

 

 

 

この日は繁華街での吟行に初挑戦しました。良いお天気です。

雷門で待ち合わせて、浅草寺でお参り、そのあと、少しだけ説明をさせてもらいました。

 

◆この日のワンポイント◆

 

・場に対して虚心に向き合うこと

 

優れた彫刻を優れた写真家が撮れば優れた作品になるか、というと、必ずしもそうはならない場合があります。それは、彫刻自体が作品として完成しきっていると、写真家側はあまり手を加える余地がなく、作家性を出せないからです。

俳句も同様で、何気ない日常の一コマから自分だけの視点でフォーカスして作ったものは句になりますが、あまりにも最初からコンテンツとして完成した対象を詠もうとすると、俳句ではなくキャッチコピーになってしまう可能性があります。

 

その意味では浅草という街は観光地であり、そのパワーに呑み込まれやすい場所、句にしにくい場所かもしれません。

しかし、人力車、雷門、ビートたけし、といった「いかにも浅草とはこういうもの」という固定観念のイメージをなくして虚心にぶらぶらすれば、自分だけの浅草が見つかるのではないか、というようなことをお話しました。

 

さて、男性陣は飲み屋街に、女性陣は花やしきに向かっていきました。一体どんな句が生まれたでしょう?

 

◆慧

 

人力車ひざの赤子の寝すがたや

線香の煙向こうに友の顔

雷門日本人の顔めずらしや

 

評:

一句目、ちゃんと浅草の句であり、そして赤子の寝姿にフォーカスしたことで自分だけの句でもあるという良い句です。以前の宿題句、「のびる猫くの字にもなる昼下がり」にも通じる慈しみの視点を感じます。

二句目は俳句の面白い所で、この句を誰だか知らない人が詠んだものなら特にどうという事もないものですが、この日一緒にお参りした仲間のことだと分かる我々には特別なものになります。贈答句にも分類できるのではないでしょうか。あとで聞いたところ、頭に浮かんでいたモデルは九さんだそうです。

三句目はちょっと風刺的、川柳的ですが浅草の現在の姿を伝えています。

 

◆葩

 

なし

 

評:

はじめての句が出来ない、という結果でした。が、当会では最初から言っているとおり、出来ないときに無理にテクニックや手癖で作るくらいなら作らない方が誠実なのでよいという考えなので、それ自体は特に問題はありません。

 

後の酒席で「どうしたら句が作れますか」と聞かれたので「好奇心を持つこと、小さなものも見過ごさず、万物に礼を払う事」といういつも通りの解答をしましたが「自分は細部ではなく全体の空気を掴みたいのだ」と仰っていました。

しかし、「浅草の全体の空気をつかむ」というようなマクロなことも、看板の字のフォントひとつや一杯の電気ブランのミクロの中にあるもので相似形ではないかと思います。

 

参考

 

 

◆九

 

昼酒をたのしむおじい初音路

異国人ハッピ買うてる下馬通り

浅草や人の波間に煙みる

 

評:

初音路は上の写真にもある初音小路飲食店街です。緑の屋根の下、屋外で飲むお酒はなかなか風情があり、ここだけ静かで違う空気が漂っています。これもまた浅草の一面です。

二句目、「買うてる」は旦那さんのよく使う口調ですね。夫婦を感じました。

三句目は上の句を浅草寺としたほうが、何の煙かわかるので親切かもしれません。

 

◆夢坊人

 

十二階夢がうつつのスカイツリー

オッペケペ反骨の血は今何処

浅草寺柳の枝は風に揺れ

 

評:

関東大震災で崩壊した幻のタワー「十二階」や自由民権運動の風刺歌「オッペケペ節」など、渋い題材を詠みこんでいます。夢坊人さんしか作れない句という点でオンリーワンです。

逆に三句目は今、この瞬間の浅草を捉えた句です。柳は浅草という街の基調になるモチーフで、そこに目を付けたのはとても良いのですが、少し物足りなさもあります。もうちょっと何か視点に夢坊人さんらしさがあると、よりよくなるのではないでしょうか。

 

◆ピエール

 

汗かけど風はやわらか浅草寺

入道を突き刺すバベル金と銀

ゆかた着るふたりづれさえ異邦人

 

評:

一句目、汗という自分の身体性と風という自然、そして浅草寺というロケーションがパッケージされ、見た(聞いた)瞬間に、あの日の気温や匂い、湿度が呼び起こされます。たしかに不思議と浅草は風当たりが柔らかい。土地の性質をよく捉えていると思います。

二句目、銀のバベルはスカイツリーとして金は? と思ったら、浅草寺五重塔の先端とのことでした。雷門だけに、という見方も出来ます。

三句目、慧さんや九さんと似た句ですが、説明を聞くと外国の方が着物を着ていたという句ではなく、浅草の過剰なジャパニズムの中でさらに着物を着ている日本人を見て、むしろそれが異邦人に見えた、ということでした。なるほど、と思いましたが一読してそう分かるのはちょっと難しいですね。

 

◆三平

 

有難さ探しあぐねて浅草寺

出会いとは仏縁なりと覚えたり

人の世の悲しさ臭う六区道

 

評:

浅草寺はあれだけ巨大建築で歴史もあるのに不思議と、荘厳とか、思わず背筋が伸びる、聖地、というような感じをうけません。むしろ弛緩して昼から酒を飲んでいてもいいじゃないか、と思わせる不思議な感覚があります。

インドでは帝釈天などの享楽的、スーダラ節的なヒンドゥー教由来の神々をデーヴァ神族、対して厳しい修行と厳格さ、自己実現を良しとするゾロアスター教由来の神々をアスラ神族と分類しますが、浅草はあきらかに前者の性格が影響しているように思われます。一句目はそれを詠んでいます。

二句目は句会や太極拳などの「利害関係や上下関係のない集まり」の尊さを感じたということを何度も強調して解説してくれました。ありがとうございます。私もそう思います。

三句目は、古き良き浅草を知っているだけに比較してしまったそうですが、六区道が六道にも通じ、偶然にも三句とも仏教色の強い句になりました。これも仏縁でしょう。

 

私も二句

 

浅草や犬のはりこを供として

天国はホットケーキの中にある

 

犬はりこをおみやげ買い求めたのと、『珈琲 天国』の焼き印付きのホットケーキを詠みました。

 

句選では二票が三つで

 

人力車ひざの赤子の寝すがたや

十二階夢がうつつのスカイツリー

有難さ探しあぐねて浅草寺

 

となりました。

 

選評は路上に張り出した縁台で煮込みをつつきながらホッピーを飲みながら行いました。そののち、解散したはずがもう一軒、となり、地下街をぶらっと一回りしたのち、大衆酒場ニュー浅草で飲みなおすことに。

全体的な感想としては俳句関係なく単に遠足として楽しかった、という声が散見されました。私も気がつくと雷おこしやヌンチャクなどを買い求めたりしていました。浅草の魔力です。閉館してしまった観音温泉も行きたかったのですが残念です。

 

 

 

 

おまけ

 

NO MENTI!!
 
 
見習いたいパワーワードです。
 
 
 

JUGEMテーマ:俳句